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1日だけのカフエーパウリスタ


移民の父として知られる水野龍がはじめた喫茶店「カフエーパウリスタ」の支店が入っていた甲陽園の洋館で、「1日だけのカフエーパウリスタ」という4時間限定のイベントを開かせていただきました。

  

この建物は大正8年に甲陽園を開発した甲陽土地株式会社の事務所として建てられ、1階に大阪カフエーパウリスタが開業していました。大正時代の甲陽園は、少女歌劇や遊園地、温泉、旅館、映画撮影所などからなるレジャーランド・甲陽遊園で賑わう観光地で、訪れた観光客はここでブラジルコーヒーを飲み一休みしたと言います。東亜甲陽の貘與太平、徳永フランク、山本嘉次郎、印南弘、細山喜代松監督、エノケンや浪花千栄子、漫画家の小生夢坊など映画関係者や文化人も多く訪れました。

 

建築はセセッション様式で、子供三人が並んで上れるほどの大きな階段と波に千鳥のステンドグラスが印象的な三階建ての木造建物です。竣工当時の屋根の色はモスグリーン。ハーフティンバーと下見板の色もモスグリーンだったそうです。屋根組みは洋風トラスではなく和風小屋組でした。

 

老朽化のため9月に解体されるため、お別れ会として1日だけ「カフエーパウリスタ」として建物を公開するイベントを開かせてもらいました。何と言っても広いお宅ですので、建物の見学だけでなく、3つのお部屋でパネル展示、2つのお部屋で映像の上映も行いました。また、カフエーの再現にコーヒーとクッキーは欠かせないということでお願いしたところ、コーヒーはUCCコーヒーさんに、クッキーはケーキハウス・ツマガリさんにご協力いただくことが出来ました。

 

イベント当日は開場1時間前から建物を囲んで行列ができたので、予定より早く入場してもらうことにしました。9月と言えどもクーラーの無い建物内部はし暑く、芋の子を洗うような人混みを見て外部から写真だけ撮って帰られた方も少なくなかったようです。(実際私の知り合いも外部から写真だけ撮って帰られました)それでもたった4時間の公開に860名の方が訪れ、大正時代のモダニズム文化を空間体感し、往時を偲ばれました。

 

現在の所有者の方にお別れ会の提案したのが8月21日。解体工事は9月4日スタート。ぎりぎりまで引越し作業をされるということで、お別れ会は9月3日に決行しました。

2週間を切るタイトなスケジュールの中、眠る時間を削って準備をした結果、多くの人に甲陽園の歴史とパウリスタの歴史を知っていただくことができました。突然の提案にも関わらず快諾してくださった所有者さん、当日お手伝いしてくださったみなさま、コーヒーをご提供いただいたUCCコーヒーさん、クッキーをご提供いただいたツマガリさん、そしてこのイベントを新聞で紹介してくださった記者の方々に感謝の気持ちでいっぱいです。目に見えない何かがこのイベントを成功させてくれたのだと思います。

 

催事名 1日だけのカフエーパウリスタ

日 時 2016年9月3日(土)16時〜20時

会 場 甲陽園高橋邸

 

2016年8月31日 毎日新聞朝刊

2016年9月1日 朝日新聞朝刊

2016年9月2日 読売新聞朝刊

2016年9月3日 神戸新聞朝刊

2016年9月3日 産経新聞朝刊