あの吉田寮食堂で私の制作した映像の鑑賞会を開くことになりました。
私が吉田寮をはじめて訪れたのは2011年。西澤英和先生の「ほぼ百年祭記念講演会」の様子を撮影しに訪れたのです。講演会当日一歩足を踏み入れた途端、フォトジェニックな吉田寮に私は心を奪われたのでした。
(西澤先生の講演会の様子は下記のURLでご覧いただけます。)
どういうところがこんなに心惹かれるのか考えてみると、まず圧倒的な大きさです。100メートル競争が出来そうなくらい長い廊下(実際には90mほど)に居室がずらっと並んでいます。次に日本人のDNAに深く刻まれている木造の建築であるということ。そして木造建築でありながら階段の親柱や手すりに西洋建築のゼツェッション・分離派のモチーフが施されていたり、正統派西洋建築の窓だったり、いわゆるレトロ建築に共通の洋風のデザインが施されているところです。そして森のようにはびこった植栽。そこで飼われている動物たちとの共生。旧制高校を彷彿させるような議論(話し合い)が今も行われている寮生活などなど、日本でありながら日本でないような、現役の学生さんが暮らしているのに別次元の時間の流れている吉田寮はとにかくとびっきり魅力的な建物なのです。
吉田寮との出会ってから会う人会う人に吉田寮がどんなに素晴らしいか話をしていたら、当時大阪市文化財研究所の所長をされていた長山雅一さんから吉田寮OBの親友、中尾芳治さんを紹介してもらうという幸運に恵まれます。中尾さんたちは、卒業から50年経った今でも毎年OB会を開いているということで、早速その記録からはじめることにしました。
ところが撮影をはじめた2012年当時の吉田寮は、今のようにひらかれた吉田寮ではなかったので、寮の撮影許可が出ず、吉田寮の映像なのに吉田寮を撮影が出来ないということでお蔵入りになっていました。吉田寮は自治寮なので寮生全員の同意がないと撮影させてもらえなかったのです。
完成を諦めていた吉田寮の映像だったですが、2018年に事態が好転します。大学側が「築後100年以上を経過した吉田寮は耐震性を著しく欠き、地震が発生した場合に倒壊するか大破するおそれがある」ということで吉田寮生の立ち退きを求めてきたことから、寮生たちがOBや地域の方々と連携して吉田寮を未来に残していこうというスタンス、ひらかれた吉田寮へと変わったのです。急いで吉田寮を撮影させてもらい、6年越しに完成することができました。
待てば海路の日和ありとはこのことか、映像が完成しただけにとどまらず、吉田寮の映像を吉田寮食堂で上映できることになりました。当日は建築の専門の先生のお話やOBのお話、現寮生のコメントなどいろんな立場の方々がそれぞれ発言され、とても良い会になったと思います。こういう自由な雰囲気も吉田寮食堂という場が成せる業なのかもしれません。
催事名 食堂企画 吉田寮建築歴史ドキュメンタリー鑑賞会
日 時 2018年8月18日(土)18:00〜19:30( 開場 17:30)
会 場 京都大学 吉田寮食堂 (京都市左京区吉田近衛町69)
参加費 カンパ制
申込み 不要 直接会場へ
主 催 関西の歴史建築ドキュメンタリー上映委員会
<プログラム>
17:30 開場
18:00 「吉田寮が寄宿舎と呼ばれていた時代の自治 銀杏並木よ永遠に」上映
18:45 トーク 石田潤一郎「吉田寮建築の魅力」
19:00 トーク 中尾芳治「寄宿舎の思い出」
19:15 会場と一体となって意見交換
19:30 終了 その後懇親会 吉田寮食堂の「食堂酒場」で飲食など
<作品紹介>
関西の歴史建築 vol.10
「吉田寮が寄宿舎と呼ばれていた時代の自治 銀杏並木よ永遠に」(2018/42min/HD)
出 演 協 力 京大寄宿舎舎友会
撮 影 協 力 吉田寮生の皆さん
建 築 協 力 石田潤一郎
特 別 出 演 中ムラサトコ チェリータイフーン 矢野絢子 バロン ジョーダン
資 料 提 供 中尾芳治
ナレーション 下間都代子
選 曲・ 音 効 吉田一郎
企画・構成・編集・製作 若林あかね
2018年8月10日 朝日新聞夕刊
吉田寮食堂内部
武庫川女子大学客員教授・文化庁専門委員の石田潤一郎先生
吉田寮OBの中尾芳治さん
京都繊維工芸大学助教の笠原一人先生
筆者
吉田寮生の喜友名さん
吉田寮生の半澤さん